KYOTO * 通訳

an interpreter in Kyoto:京都にて、駆け出し通訳者の日々。

「代走のスペシャリスト」鈴木尚広選手

先日何気なく観た「アスリートの魂」 (NHKBS)に思わぬ励ましを受けました。

成功率8割の「代走のスペシャリスト」、巨人軍の鈴木尚広選手の舞台裏を映す特集番組でした。

 

彼は代走のスペシャリストですから、試合での出番はあるかないかわかりません。あっても試合終盤でのほんの1回、2回。しかし彼は、誰よりも先に球場入りし、試合終盤での、たった1回あるかないかもわからない代走者としての出番までの間、ベンチ裏での準備に、実に9時間を費やすといいます。

 
そしていかに速くベースに到達するかを日々追求し、その一事の技術を高めるためのトレーニングを積み重ね、スピードスケートの清水選手にはスタートダッシュの極意を教わり、何年もかけて独自の技術を編み出してきました。そこにあるのは、飽くなき探究心と非常な努力を傾けて、代走のスペシャリストとして誇りをもって自己研鑽する姿でした。
 
彼の言葉も印象的でした。
もともとは1番打者を目指していたが、紆余曲折と葛藤を経て現在のポジションを得た過程で、
 
「目指していたものとは違うが、チームとして戦う上で必要とされる人間であろう、その中で自分の活かせるものを活かそうと決めた」 とのことでした。
 
そして現在も、出番がなかなか回って来ない時、試合への出場が減ってくる時、つまり仕事に関する自分の立ち位置が不安定に思われる時こそ、そのことと「自分でちゃんと向き合わないといけない」と。
 
「小さな傷口を、そこから悪いもの(=悪い思い、弱い心、隙など)が入ってこないように留めて、拭い去っておくことが大事」 であると語っていました。
 
あるかないかの代走のために自分のすべてを賭けて生きる彼の姿勢と、それがもたらすプロとしての働きの結果や充足は、事前に費やされる努力が決して「割に合わない」ものなどではないとわかるものでした。
 
実はこの番組を観た時、私自身はちょうど次にいただく仕事について「ちょっと割に合わないかなぁ」と思う仕事について「心の隙間風」が入ってきそうになっていたところだったと認めざるを得ません。(手抜きをしようとかいうわけではなく(そんな余裕はない)、ちょっとした"不満感"が発生しかけてました。)
 
でも、この番組で鈴木選手のただ“一走”に賭ける、代走専門選手としての生き様を観て、このくすぶる思い(姿勢)をいたく反省。
 
最初はすべては経験と思っていただける仕事は基本的に、可能な限り何でも引き受けたいと思っています。そう思ってお引き受けした仕事なのだから、一面で割に合わないと思われても全力投球しよう、と改めて気持ちを引き締めました。
 
そして、この一件に限らず、今後も
 
・自分の体力を過信せず、体調管理に気を配ろう。
・喉の状態に気を配ろう。
・体調と喉の状態については、未然のチェックとケアを怠らないように。
・「準備は常に100%」私にとってそれが通訳と真摯に向き合うということ。
・地道な作業にこそ自分をコミットしよう。
 
と心に刻みました。
 
スパイクには鈴木選手の信念である「Be ready」の言葉が刻まれているそうです。
私も日々の研鑽を怠らず「準備はできている」と言える通訳者でありたい。
 
「一瞬の勝負で輝くために、最高の準備を続ける」
 
鈴木尚広選手、本当にかっこいい人だ。
私もこういうかっこいい人になりたいなあ。
 
本も書いておられるようで読んでみたいです。
 
いやぁ、いいタイミングでのいい出会いが、さーっと降ってきた。
天の声、かな。
鈴木選手、神様、ありがとう。